羣青

昨年読んだ作品の中で、最も感動した『羣青』という漫画について。

 

羣青 上 (IKKI COMIX)

羣青 上 (IKKI COMIX)

 

 

本日が作者・中村珍さんの誕生日とのことで、

自分の2013年振り返りとか今年の抱負はおいといて、読書感想文を書くことにします。

おめでとうございます。

 

この作品の主人公は、父親からも夫からも暴行を受け続けた女性(メガネさん)と、

その女性に惚れた同性愛者の女性(レズさん)、という2人。

そして、レズさんはメガネさんの依頼に従い、メガネさんのダンナを殺害する。

で、なんだかんだで2人一緒に逃げる。その道中が作品になっている。

 

このように、はっきり言って設定が飛びすぎていて、本来なら主人公2人の気持ちは、多くの人にとって「よくわからない」はずの物語である。

そして、主人公2人も、他者からの不理解、人を殺したこと、人を殺させたことに苦しみながら、お互いに理解し合うこともできず、むしろ傷を深め合いながら進んでゆく。

 

 

しかし、読者は「よくわからない」はずの主人公達の苦しみに共感し、引き裂かれるような感覚を共有することになる。

僕は、なぜ自分がこんなにも自分と違う人の心情に同調し、苦しんだり感動しているのか、不思議だった。「理解」することなんて決してできていないはずなのに。

 

恐らく、本来なら体験できない共感を、激しく感じさせるだけの力をこの作品が持っているということだと思う。台詞にも、絵にも、ひとつひとつ力がこもっている。

 

この作品によって僕の人生が変わったかどうかは知らないけど、この作品に出会わなければ決して得られない体験が出来たと思うし、そのことに感謝している。

 

おすすめです。